すでに見たように、日中の眠気は二時間ごとに周期的に変動するので、測定の開始をいつにするかで結果が左右されるが、経験的に覚醒してから一時間半から三時間のあいだではじめるといいとされている。ふつう八?九時ごろにはじめることが多いが、施設によってはこれでは早すぎて無理ということもあり、 一〇時からはじめることもある。断眠後の眠気測定では、「眠ってください」という指示ではすぐ眠ってしまって、眠気の強さを判定することができなくなる。そこでベッドで寝るかわりにリクライニングシートにすわってもらい、「起きていてください」と指示する。このような潜時テストを覚醒維持検査(MwT)という。平均潜時が一五分以下であるときには病的な眠気が疑われ、車の運転をみあわるなど生活指導が必要とされている。食事や日中の活動で活動水準が変化することは、よく知られていることである。日常生活では一二時に強い眠気を感じることはない。この時間は、昼ごはんを食べているので眠気がまぎれている。潜在的に眠気があっても、日常生活の行動でそれが隠蔽されることを、マスキング効果という。屋外で体を動かしているときには、ほとんど眠気を感じることがないのは、マスキング効果がはたらいているからである。

 

 

一方、午後二時の眠気は食後の眠気ともよばれ、長いあいだ昼食をとったためにおこると考えられてきた。もっとも有力な説明は脳貧血説で、消化器に血液があつまる結果、脳は貧血状態になり、覚醒が維持できなくなるのだというものである。そうであるなら、朝食の後ももっと眠くていいはずであるが、 一〇時の眠気はそれほど強くない。同様に夕食後にも強い眠気がきていいようであるが、寝不足でもないかぎりそのようなことはおこらない。それでもこの消化―脳貧血説はかなり強固な支持を受けているので、この問題に決着をつけるため、恒常化法T ンスタントルーチこというMSLTの特別版が考案された。これは食事の影響が分散するように、わずかずつ分けて食べるようにしてMSLTを測定する。また活動を制限し、測定が終了しても、食事やトイレ以外はそのまま四五度に倒したリクライニングシ卜にすわって、つぎの測定を待った。したがって、恒常環境に近い条件統制になっている。図2 ・6は、このようにして食事と運動の影響をとりのぞいた条件で測定したMSLTのデータを、ふつうの食事条件で測定したMSLTデータとくらべたものである。小学五、エハ年生(児童期一一〇.一二歳)では午後の眠気はどちらの方法でも見られない。 一五時三〇分の眠気は一六.一七歳の青年期以降で明瞭にあらわれ、食事の影響をとりのぞいた恒常化法のほうがいっそうはっきりとしている。高齢者(六二.七四歳)でも、ふつうの測定では一三時三〇分と比較的早い時期に眠気があらわれるが、恒常化法で測定すると、高校生と同じように一五時三分に眠気のピークがあらわれる。このように、午後二.四時の眠気は、食事の影響をとりのぞいても、強固にあらわれる。 一方、小学生にはこの眠気はみとめられない。このことから午後の眠気の発生には、発達あるいは成熟過程のかかわりがうかがわれる。