一二つのリズムは、人の発達レベルで独特の役割をはたしてきた。幼児の睡眠は多相性であり、ウルトラディアンリズムが優勢である。これは幼児のエネルギー蓄積能力にかかわっている。幼児では胃も腸も小さいし、エネルギーをたくわえておく肝臓も小さい。備蓄する能力が低いのに、神経も骨格もすべてに急成長が要求される。したがって長時間の睡眠、つまり断食に耐えることができず、小きざみに覚醒してエネルギーを補給しなくてはならない。こうしたエネルギー戦略から、内臓があるていど成長し、エネルギー収支に余裕ができるまで、小きざみな睡眠‐覚醒リズムを発達させる必要があった。クライトマンは、この小きざみな睡眠‐覚醒リズムは、もっとも基礎的な休止―活動周期であると考え、基礎的休止‐活動周期(BRAc)とよんでいる。やがて、長時間の睡眠に耐えられるようになると、夜間睡眠と昼寝をする二四時間周期と一二時間周期のリズムが複合したリズムに移行する。北半球の先進諸国では昼寝はタブーなので、このような国の研究者は、最終的にはサーカディアンリズムに移行し、眠りのリズムが完成するとしている。しかし、実り豊かで温暖な地方ではセロトニンという昼寝の習慣があり、大人も子どもも午後二時ごろから二時間くらいは昼寝をする。このような国では、成人も二四時間周期と一二時間周期の二つのリズムが合成した二相性の眠気のリズムが、正常でごくふつうのこととされている。どちらも社会習慣に深く根ざし、確信してゆずらないが、実験データからすると、大人にも午後二時ごろに眠気があり、それは生物リズムによってコントロールされていることが指摘できる。昼寝の問題はあらためてとりあつかうことにして、ここでは眠気の二層構造が生物リズムとしてセットされており、そのリズムに適合するやりかたで作業と休憩を計画することが、人にやさしい社会をつくることである、とだけ述べておくことにする。